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原告商標が商標法4条1項15号に該当することを理由に、拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の判断を支持した知的高等裁判所判決について

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知的財産高等裁判所第4部(菅野雅之裁判長)は、令和4年11月21日、商標登録拒絶査定不服審判における不成立審決に対する審決取消請求について、原告商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の判断を支持し、原告の請求を棄却しました。

ポイント

骨子

  • (引用商標の周知性について)本願商標の指定商品と引用商標が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性が認められるから、本願商標の指定商品の取引者、需要者の間においても、引用商標は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だったものというべきである。
  • (出所混同のおそれについて) 本願商標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第4部
判決言渡日 令和4年11月21日
事件番号 令和4年(行ケ)第10033号 審決取消請求事件
審決番号 不服2019-60号
本願商標 MIRAI(標準文字)
引用商標 画像1
裁判官 裁判長裁判官 菅 野 雅 之
裁判官    本 吉 弘 行
裁判官    岡 山 忠 広

解説

商標の登録要件

商標の登録要件は以下の通りです。
①自己の業務にかかる商品または役務について使用をする商標であること(商標法3条1項柱書)
②自他商品・役務識別能力があること(3条2項)
③不登録事由(3条1項各号、4条1項各号)に該当しないこと

出所混同を生じる商標に関する不登録事由(商標法4条1項15号)

上記の不登録事由の中には、商標の本質的機能の一つと言われる出所表示機能が阻害されることがないよう、商品・役務の出所混同を防止することを趣旨とするものがあり、具体的には、商標法4条1項10号から15号の定めがあります(*13号は法改正により削除されました)。

商標法4条1項10号から14号の不登録事由は以下の通りです。

  • 4条1項10号:他人の周知商標と同一・類似の商標であって、その周知商標と同一・類似の商品・役務について使用するもの
  • 4条1項11号:先願登録商標と同一・類似の商標であって、その指定商品・役務または類似の商品・役務について使用するもの
  • 4条1項12号:他人の登録防護標章と同一の商標であって、その指定商品・役務について使用するもの
  • 4条1項14号:種苗法上の登録品種の名称と同一・類似の商標であって、その品種の種苗または類似の商品・役務について使用するもの

商標法4条1項15号は、10号から14号の不登録事由の総括的なものであり、これら不登録事由に該当しない商標について規定したものといえます。

商標法第4条(商標登録を受けることができない商標)
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
(略)
十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

商標法4条1項15号によると、以下の①②の要件をいずれも満たす商標は、商標登録を受けることができません。
①他人の業務にかかる商品・役務と混同を生じるおそれがある商標であること

②商標法4条1項10号から14号までに掲げる商標ではないこと

出所混同のおそれ

「出所混同」とは

出所混同の意味について、特許庁の商標審査基準は、以下のように定めています(商標審査基準第3十三-1⑴)。

商標審査基準第3十三-1⑴

その他人の業務に係る商品又は役務(以下「商品等」という。)であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある場合をもいう。

すなわち、商標法4条1項15号の「混同」とは、商品・役務の出所が同一であると誤認されること(狭義の混同)に限定されるものではなく、商品・役務の出所は同一ではないが、親子会社、系列会社等の緊密な営業上の関係や、同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にあると誤認されること(広義の混同)まで含むと言えます。

裁判例においても、最高裁平成12年7月11日判決(レールデュタン事件)は、以下の通り、商標法4条1項15号の「混同」には、狭義の混同のみならず、広義の混同が含まれる、との判断を示しました。

最高裁平成12年7月11日判決(レールデュタン事件)
商標法四条一項一五号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。

どのような場合に、出所混同(広義の混同)のおそれがあるといえるのか、特許庁の商標審査基準は、商標法4条1項15号に該当する事例(出所混同のおそれが認められる事例)として、以下の2例を挙げています(商標審査基準第3十三-1⑴)。

①     事業者甲が自己の業務に係る役務「ラーメンの提供」に商標「S」を使用しこれが全国的に周知になっている場合において、事業者乙が自己の業務に係る商品「そばの麺」(役務「ラーメンの提供」とは非類似)に商標「S」を使用したときに、その商品に接する需要者が、その商品が甲の兼業に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる場合。

②     事業者甲が自己の業務に係る商品「電気通信機械器具」に商標「JPO」を使用し、これが全国的に周知になっている場合において、事業者乙が自己の業務に係る商品「おもちゃ」(商品「電気通信機械器具」とは非類似でかつ、商品の生産者、販売者、取扱い系統、材料、用途等の関連性を有しないもの)に商標「JPO」を使用したときに、その商品「おもちゃ」に接する需要者が、たとえ、甲の業務に係る商品であると認識しなくても甲の関連会社の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる場合。

出所混同の判断事由

出所混同のおそれの有無の判断手法について、特許庁の商標審査基準では、以下の事由を総合勘案して判断する、と定められています(商標審査基準第3十三-1⑵)。

①     出願商標とその他人の標章との類似性の程度
②     その他人の標章の周知度
③     その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
④     その他人の標章がハウスマークであるか
⑤     企業における多角経営の可能性
⑥     商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
⑦     商品等の需要者の共通性その他取引の実情

このうち、②の周知度に関しては、必ずしも全国的に認識されていることは要しない、とされています(商標審査基準第3十三-1⑵)。

また、外国において著名な標章については、我が国内の需要者によって広く認識されているときは、その事実を十分考慮して判断する、とされています(商標審査基準第3十三-1⑶)。

出所混同の判断基準時

不登録事由の該当性については、原則として、特許庁における審査時点を基準として判断されます。
もっとも、商標法4条1項15号については、査定時において同号に該当していても、登録出願時点において同号に該当していなければ、同号は適用されません(商標法4条3項)(商標法4条1項8号、10号、17号、19号も同様)。

分割出願(商標法10条1項)

分割出願と出願日の遡及

商標登録出願をした者は、一定の要件のもと、2以上の商品・役務を指定商品・役務とする出願の一部について、1または2以上の新たな商標登録出願とすることができます(分割出願、商標法10条1項)。

また、適法な分割出願においては、元の商標登録出願の時点でなされたものと見做されます(出願日の遡及、商標法10条2項)。

分割出願の要件

分割出願の要件は以下の通りです(商標法10条1項)。

①もとの出願が審査、審判若しくは再審に係属していること。
②新たな出願がもとの出願の商標と同一であること。
③新たな出願に係る指定商品・指定役務が分割出願直前のもとの出願に係る指定商品・指定役務の一部であること。
④新たな出願に係る指定商品・指定役務が、新たな出願と同時に手続補正書によってもとの出願から削除されていること。
⑤もとの出願の出願手数料が納付されていること。

⑤の要件は、平成30年5月23日の商標法改正により追加されたものであり、平成30年6月9日以降の分割出願に適用されます。

補正の必要性

商標法施行規則22条2項が準用する、特許法施行規則30条では、「新たな特許出願をしようとする場合において、もとの特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を補正する必要があるときは、もとの特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正は、新たな特許出願と同時にしなければならない」と定められています。
そのため、商標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合において、元の商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければなりません。

この点、分割出願においては、元の商標登録出願の指定商品等を2以上に分けることが当然の前提となっているため、元の商標登録出願において、分割出願に係る指定商品を削除しなければ、元の商標登録出願と分割出願とで指定商品等が重複するという事態が生じてしまいます。

そのため、分割出願を行う場合には、分割出願と同時に、元の商標登録出願について、分割出願に係る指定商品を削除する補正の必要があり、このような補正を行わなければ、不適法な分割出願となり、商標法10条2項が規定する出願日遡及の効果は生じません。

事案の概要

原告は、平成27年9月24日、以下の商標(以下「原告商標」といいます)について、商標登録出願をしました(商願2015-92058)。

<原告商標>
商標の構成 MIRAI(標準文字)
指定商品
(出願時)
第12類「船舶、船舶の部品及び附属品、航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車両の部品及び附属品、自動車、自動車の部品及び附属品、二輪自動車、二輪自動車の部品及び附属品」
(補正後)
第12類「航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車両の部品及び附属品」
登録出願日 平成27年9月24日

なお、本出願登録は、平成27年7月18日に登録出願された商願2015-68401(以下「原商標登録出願」という)における、商標法10条1項の規定による分割出願として登録されたものです。

特許庁は、原告からの登録出願に対して、拒絶理由の通知を行い、さらに、原告からの指定商品変更の補正を受けたうえで、平成30年7月31日、拒絶査定をしました。

原告は、平成31年1月4日、拒絶査定不服審判を請求しましたが(不服2019-60号)、これに対し、特許庁は、令和4年3月2日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」といいます)をし、同年4月7日、本件審決謄本が原告に送達されました。

審決理由は、先ず、原告が主張した出願日遡及に関しては、原商標登録出願について商標法施行規則22条2項が準用する特許法施行規則30条の規定による必要な補正がなされておらず、商標法10条1項の規定による商標登録出願の要件を満たすものではないから、同条2項が規定する出願日遡及の効果は生じない、というものでした。

また、商標法4条1項15号該当性については、以下の商標(以下「引用商標」といいます)がトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ社」といいます)の取扱いにかかる燃料電池車(以下「トヨタ燃料電池車」といいます)を表示する商標として、原告商標の登録出願以前より審決時に至るまで、自動車の取引者・需要者はもとより、一般の需要者の間にも広く知られているところ、原告商標と引用商標が互いに類似するため、原告商標を指定商品に使用した場合に、取引者・需要者をして、引用商標を連想・想起させ、原告商品がトヨタ社あるいはグループ会社の業務に関係するものとの出所混同を生じるおそれがあり、商標法4条1項15号に該当する、というものでした。

<引用商標>
商標の構成
画像2

指定商品
第12類「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除。),動力伝導装置,制動装置,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・三輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」

そこで、原告は、令和4年5月1日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起しました。

判旨

それでは、本判決の判旨を見ていきましょう。

出所混同の判断基準、基準時

先ず、裁判所は、以下の通り、商標法4条1項15号の「混同を生じるおそれ」の有無の判断基準を示しました。

商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。

次いで、裁判所は、商標法4条1項15号該当性については、商標登録出願の時に該否判断がなされることから、原告商標の商標登録出願がいつであるかが問題となる、として、本件における争点の一つを示しました。

出願日の遡及について

原告は・・・商標法施行規則22条2項は違憲違法であり、その結果、本願は商標法10条1項による商標登録出願の要件を満たすものとなり、同条2項が規定する出願日遡及の効果が生ずるから、本件における出願日は、原々商標登録出願がされた平成26年9月8日になる旨主張しました。

これに対し、裁判所は、以下の通り、商標法施行規則22条2項が違憲違法であるとの原告主張を排斥しました。

もとの商標登録出願と分割出願で指定商品等が重複するのを避けるためには、もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する補正が必要となることは、商標法10条1項自体が想定しているものということができる。

商標法施行規則22条2項は、特許法施行規則30条を準用し、商標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合において、もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければならないとしているところ、これは、もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する必要が生ずるという、同項が想定する事態に対処するものであるというべきであり、上記最高裁判決も、このような意味で、商標法施行規則22条4項(現2項)が商標法10条1項に適合することを明らかにしていると理解される。

また、裁判所は、以下の通り、原告商標の登録出願について、商標法10条1項の分割出願の要件を充たすものではないとして、出願日遡及の効果は生じない、と判断しました。

本件においては、そもそも、本願の商標登録出願時はもとより現在に至るまで、原商標登録出願について、本願に係る指定商品を削除する補正がされたとは認められず、商標法施行規則22条2項の要件を欠くばかりか、もとの商標登録出願の指定商品等を2以上に分けるという前記 の分割の前提をも欠くものである。そうすると、本願の商標登録出願は、商標法10条1項の規定による商標登録出願の要件を満たすものではないから、分割出願として不適法であり、同条2項が規定する出願日遡及の効果は生じないものであり、これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく、出願時は平成27年9月24日となる。

出所混同のおそれの有無について
1)他人の標章の周知度、商品間の関連性、需要者の共通性など

裁判所は、以下の事実認定を踏まえて、原告商標の登録出願時点において、自動車の取引者・需要者の間で、引用商標がトヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だった、と判断しました。

①東京モーターショーへのトヨタ燃料電池車の出展
②トヨタ社がトヨタ燃料電池車の名称を「ミライ」とし、米国の特許商標庁に「TOYOTA MIRAI」を商標登録する手続を進めていると日本経済新聞社に掲載
③トヨタ社より「MIRAI(ミライ)」の名称にてトヨタ燃料電池車を販売する旨発表され、新聞各紙やウェブサイトで報道。掲載された写真では、車体やナンバープレートに引用商標が表示。
④新聞各社やウェブサイトでの報道。本文に「MIRAI(ミライ)」の表示、また、掲載写真のナンバープレートに引用商標が表示。

引用商標は、本願商標の商標登録出願時には、自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だったものというべきである。

また、商品間の関連性や需要者の共通性を認定したうえで、原告商標の取引者・需要者の間でも、引用商標がトヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だった、と判断しました。

本願商標の指定商品「航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車両の部品及び附属品」と引用商標が使用される「燃料電池車」は、人や物品の輸送を目的とするもので、商品の用途や取引者及び需要者に共通性があるし、大手企業において多角経営が行われることは一般的であり、トヨタ社の燃料電池車(MIRAI)の技術を応用した水素で走るハイブリッド鉄道車両開発をトヨタ社、JR東日本及び日立製作所が進めていること(乙63、96)も考慮すると、本願商標の指定商品と引用商標が使用される「燃料電池車」とは、密接な関連性を有しているといえる。

本願商標の指定商品と引用商標が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性が認められるから、本願商標の指定商品の取引者、需要者の間においても、引用商標は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だったものというべきである。

2)商標の類似性の程度

裁判所は、以下の通り、称呼・観念・外観について比較検討したうえで、原告商標と引用商標の類似性の程度が高いと判断しました。
①称呼
原告商標:標準文字・ローマ字の「MIRAI」からなり、「ミライ」の称呼を生じる。

引用商標:「MIRAI」の文字をデザイン化したものと認識することができ、「ミライ」の称呼を生じる。

②観念
原告商標:日本語の「未来」に由来することが容易に理解でき、同観念を生じるほか、・・・引用商標がトヨタ燃料電池車を表示するものとして、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念も生じる。

引用商標:引用商標及び「MIRAI」の文字は、引用商標がトヨタ燃料電池車を表示するものとして、自動車の取引者及び需要者並びに本願商標の指定商品の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「未来」の観念と共に、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念も生じる。

③外観
引用商標は「MIRAI」の欧文字をデザイン化したものであるから、本願商標と引用商標は外観上相紛れるものである。

本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いものというべきである。

3)出所混同のおそれ

裁判所は、先に認定した引用商標の周知性や本願商標との類似性の程度が高いことなどを理由として、以下の通り、出所混同(広義の混同)を生ずるおそれがあるとの判断を示しました。

引用商標は、本願商標の商標登録出願日である平成27年9月24日には、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係る燃料電池車を表示するものとして周知著名であり、現在に至っていること、本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いことからすると、本願商標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。

4)小括

以上の判断を踏まえて、裁判所は、以下の通り、請求棄却の判決を下しました。

本願商標が商標法4条1項15号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。そうすると、原告主張の取消事由は理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。

コメント

商標登録拒絶査定に対する不服審判の結果(不成立審決)を争ったり、一旦登録された商標の無効審判を求める場合など、商標法4条1項15号等における「出所混同」の有無が争点となるケースは少なくありません。
本判決は、従来の裁判例や特許庁の商標審査基準を踏まえて、「出所混同」のおそれの有無についての判断を示したものであり、実務上参考になるものとして紹介します。

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(文責・平野)


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